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卒業式と入学式 [記事]

少し前のことになりますが、中学部の卒業式と高等部の入学式がありました。

 まだ子どもらしい、あどけない表情だった中学1年生から、みるみる背が伸び、
少年から青年らしい顔つきになり、本当にあっという間に大人に近づいてしまっ
たこの3年間。
 なかなか教室にいられずに、すぐにロビーや中庭や体育館に飛び出してしまっ
ていた頃が今では懐かしくもあります。
参観日に行っても自分の子の姿が見えないから、よく探しに行っていたっけ。
 何時になったら教室に帰ってくる、というところから、少しずつ、本当に少しずつ、
約束が守れるようになり、自分の席に座っていられるようになり、クラスのみんな
と一緒に行動できるようになってきた・・・。カタツムリのように、それはじりじりとし
た歩みでした。
 小学部までは先生たちと関わりを持つことが多かったのが、クラスの友達とも少
しずつ距離が近くなってきたこと。
 学校でのさまざまなルールや決まりごとを守ろうとする姿が出てきたこと。
 なにより、いろんな活動を自分も頑張ってやりたい、という意欲が出てきたこと。
 本当に以前では考えられないような、たくさんの成長がありました。
 三年間クラス替えがなく、同じ仲間で心おだやかに過ごせたことや、いつも優し
くあたたかく支えてくださった先生方のお陰だと思っています。
 
 「卒業式、緊張する?」と尋ねると、
 「きんちょう、しません」と答えたこうき。
 式では、自分の名前を呼ばれると、「はい!」ととても大きな声で返事をし、立
派に卒業証書を受け取ることができました。呼びかけの言葉もしっかり言うことが
でき、親としては二重の感激でした。


 それから4月。高等部の入学式を控えてのこうきの言葉。
 「にゅうがくしきは、もう最後ですか?」
何度も言って来たのですが、あまりよく考えずに、なんとなく受け流していました。
 「にゅうがくしきは、最後ですか?」
・・・そうでした。
 高等部卒業後、進学をしないこうきにとっては、これが最後の入学式なのです。
よく気が付きました。たいしたものです。
 「最後の入学式」も、こうきはとても落ち着いていました。
 「始まり」だけれども「最後」をゆっくり味わいました。
 小学部、中学部と九年間、聞き続けてすっかり覚えてしまった校歌を、いろいろな
思いを込めて、一緒に歌いました。 

 
 
 

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スクールバスの日々 [記事]

 スクールバスに乗る最後の日が来ました。
小学部1年生から中学部3年生までの9年間、思えばよく通ったものです。
 バス停までは車で10分ほどの距離。
国道沿いのその場所で、暑い日も寒い日も、同じ養護学校の友達と一緒に
バスを待ちました。
 
 小学部低学年の頃は、バス停までの道の途中で、踏み切りや信号機に引っか
かるのが待てずに、車の中で大声を上げ不安定になってしまうことがありました。
そこで、遠回りだけれども、割合スムーズに行ける高架橋ルートに変更し、
なんとかこうきも私も精神的に楽になりました。
 朝のいつものルーティンが何かの調子で崩れてしまうと、
 「のらない、のらない、バスのらない」
言い張って、動かないこともありました。
 動きが激しかった小さい頃は、ピョンピョン走っているうちに、スーッと国道へ
飛び出してしまい冷や汗が・・・なんてこともありました。

 バスの中でも、いろいろありました。
気になる場所へ来ると必ず立ち上がってしまうから、先生から、立ち上がる人は
バスには乗れません、と厳重注意を受けたり、イライラして近くの友達をつねって
しまって、私が謝りのお電話を入れたことも。
 それから、隣の席の友達にしつこく話しかけて嫌がられたこともあったっけ。
その時は、バスではお話しません、と先生と約束を決め、代わりに絵本を見る
ことになりました。
 「こぶとりじいさん」「十二支のはなし」「いそっぷどうわ」
それから3冊の絵本がずっとバスに置いてありました。
バスに乗ると、先生が渡してくれる本を開く。ページをめくって眺める。
そのことで何となく心が落ち着くことができたのかな、と想像しています。

 最後のスクールバスに乗りこむ時、運転手さんと添乗の先生に、
 「9ねんかん、ありがとうございました~」
元気に言うことができました。
 運転手さんも先生も何人か代わり、バスに乗るメンバーも卒業したり転校したりで
なかなか会えなくなってしまった人たちもいますが、今か今かと国道の向こうを眺めて
バスを待った、あの時間。母親同士でちょっとした話ができたあの時間は、なかなか
いいものだったなあ、と思うのでした。




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3月17日 [記事]

「3月17日」が口ぐせになっています。
3月18日が中学部の卒業式。
前日の3月17日でいろんなことに「おわかれ」する。
そのことが気になって仕方ないのです。

小学部から9年間乗り続けたスクールバス。
高等部からは乗ることができなくなります。
同じく小学部からずっとお世話になっていたレスパイト先。
高等部から寄宿舎への入舎が始まるので、放課後デイサービスを
一ヶ所終わりにすることにしました。
これは本人がおしまいにする、と決めたのですが、
ずっと行っていた場所に行かなくなる。
また、ずっと乗り続けていたバスに乗らなくなる。
そのことは、私たちが思っている以上に大きな変化なのかもしれません。

「3月17日、おわかれですか」
「なんのおわかれですか」
「おわかれは、スクールバスと、〇〇(レスパイトの名前)と、あとは?」
このフレーズがこの数ヶ月ずーっと続いています。
また、そのレスパイト先は、短期入所施設や就労施設も持っているのですが、
そちらにも行かない、と私に何度も名前を言わせます。
お仕事には行くかもしれないよ、と言っても、「行かない、行かない」の
一点張り。
先が曖昧なのは不安になる。おしまいならおしまいではっきりさせたいのかも
しれません。

「おわかれ」の会話が始まると、なかなか止みません。
何度も何度も繰り返すのは、そうやって「おわかれ」を納得させている作業なの
だと思ったら、あまり邪険にしてはいけない。こちらも、何度でも答えてあげなけ
ればいけないのかな、と思うのでした。


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合格発表! [記事]

先週、高等部入試の合格発表がありました。
朝8時半過ぎに昇降口に掲示されるとのこと。
結果はわかってはいても、一緒に合格を喜びたいと思って、見に行くことにしました。

名前ではなく、受験番号での発表だったので、いまひとつピンとこない様子のこうき
でしたが、自分の番号は覚えていたようです。
 「23ばん、あった」
当たり前のように言い、すーっと下駄箱へいこうとするから、
 「合格だね、おめでとう」
一応、掲示の前で写真を一枚。
 その後、先生方やレスパイトの職員さんたちからも「おめでとう」と言われ、まんざら
でもなさそうな表情でした。


思えば、養護学校入学が決まった時、親として素直に喜んであげられない自分が
いました。
どこかに、普通校をあきらめた上での養護学校という選択、という気持ちがあった
ように思います。

その時、通っていた療育センターで、入学前相談がありました。
すでに養護学校入学が決まっていた頃のことです。
 「小学校入学を、家族で思いきり盛大に祝ってあげてください。」
相談員の方にそう言われ、泣けてしまったのを思い出します。
 「いろいろこれまで大変だったけれども、本人うんと成長して、小学校入学まで来
られた。これはすごいことじゃないですか。」
養護学校入学に悲観していた親への一喝と励ましの言葉でした。

あれから9年間、やっぱりいろいろ大変なことはあったけれど、
なんとかここまでたどりつくことができた。
高等部入学を、またうんと盛大にお祝いしてあげよう、と思います。


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高等部入試 [記事]

 中学部の生活も残りわずかになり、高等部という次のステップに踏み出す
時期が近づいてきました。
 こうきの通う養護学校では、中学部の生徒ほぼ全員がそのまま高等部に
進学するのですが、その前に控えているのが「入試」(入学選考)です。

 この「入試」に向けて、3年生は早くから準備をしていました。
面接に備え、正しい姿勢、入退室の仕方、あいさつ、質問に答えること、
などなど練習を積み重ねてきました。親としてはそんなことできるの?という
感じだったのですが、その子なりに、入試ということが理解できて、少しずつ、
がんばろう、という気持ちが高まってきたようです。
 こうきは、中学部で頑張ったことの質問に対して「作業学習がんばりまし
た!」としっかり答えられていたようで、先生からは、こうきくん、毎回とても
積極的に練習に取り組んでいましたよ、と誉めてもらっていました。
 前日は持ち物も準備万端、「あしたは高等部にゅうし。たのしみ!」と余裕の
表情でした。

 入試当日、お兄ちゃんの中学のときの制服を借り、着てみるとぴったり。
まだまだ幼いと思っていたけれど、改めて、中学三年生だったんだ、とはっと
させられました。本当なら、この制服の中学に通っていたのかな、と思ったり
もして・・・。

 その後、あわただしく車で学校に向かいました。さて降りよう、と後部座席を
見ると、こうきのリュックがない。いつもなら自分のリュックはしっかり持って出る
のに、今日は「わすれちゃった、」と言うのです。
 母は青くなりました。やってしまった。中には今日必要な体操着と筆箱が入
っているのです。
 あわてて二人で受付に走りました。こうきを先に置いて、自分は荷物を取りに
帰るつもりでした。担任の先生も昇降口で控えていて下さったので、事情を話し、
一緒に受付の先生に伝えました。
 すると、先生方考慮して下さり、今日は体操のようなことはしないので、着替え
なくていいです、筆記用具も用意します、とのこと。ほっと胸をなでおろしました。
 
 そこからは、本人と保護者は分かれて選考が始まったのですが、その後のこう
きはパニックにもならず、とても落ちついていたそうです。友達たちの着替えを
最後まで見届けた後、最初の全体会の時に、何か質問は?と聞かれ、
「ぼくは体操着をわすれました。体操着なくても大丈夫ですか?」
すっと手を上げて聞くことができたと、後でこうきに付いてくれた先生が教えて
くれました。

 その先生が、「見てください」と一枚の紙を差し出しました。
それは、中学部で楽しかったことがんばったことなどの思い出を書く課題で、
そこには、こうき特有の震えたひらがなが、最後のマスまでびっしり埋まってい
ました。
 残念ながら、判読可能なのは最初の二、三行だけでしたが、修学旅行のことが
書かれてあるのはわかりました。
 「本当に一生懸命書いていて、なんだかジンとしちゃって。」
と先生。私もうなずきました。
とても文章など書けるはずもないこうきですが、なんとか書こうとした。そのことが、
ただひたすら嬉しかったのです。
ハードルが高いような気がしていましたが、こうきもちゃんと入試の経験ができた。
本人なりにひと回り大きくなれた、貴重な経験でした。

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サンタさんはどこから [記事]

年も押し迫ってきましたが、クリスマスのことを少しだけ・・・

・・・去年のクリスマスは、あらかじめ欲しいものがお母さんから手渡されて、24日の夜は
サンタは来なかったのだっけ。
ボクは希望通り、仮面ライダーベルトがもらえたから、嬉しかったけれど、妹のれーちゃんは
朝起きてきて、サンタが来なかった、と少しがっかりしていた様子だった・・・。

そんなことから、今年は一応ツリーの下に、プレゼントを用意してみました。
25日の朝、起きてきたこうき、しばらくプレゼントの袋には気がつかない様子でした。
だいぶ時間が経ってから、リボンの袋を提げて飛んできて、
 「なんか、ありました!」
こちらは、何食わぬ顔で
 「お、プレゼントかな?」
慌てて開けるこうき、目下お気に入りの妖怪ウオッチのついたタオルや箸などが出てくると、
ぴょんぴょんはずんで嬉しそうな様子。
 「サンタさん、来ました」
・・・そうだね、来たんだね。
 「サンタさん、何時来ましたか」
・・・何時だろうね、夜中だな。2時かな、3時かな?
 「お母さんは、サンタさん会いましたか」
 「サンタさんどこから来ましたか。玄関から来ましたか」
・・・ううん、おかあさんは会ってないんだよ。

それから何度も「サンタさん、来ました」と言う笑い顔に、まだ信じていたのか、とこちらも楽しく
なりました。
妹の方も、包みを前に、ありがとう、とニコニコしています。
信じていても、信じていなくても、思いがけないプレゼントは嬉しい。
サンタの力は大きいものですね。


指しゃぶりとゴミ出しと [記事]

この間、担任の先生に言われて気づきました。
 「こうきさん、学校では指を口に入れることが全く無くなったのですが・・・」
そういえば、と家での様子を見ていると、確かに・・・指が口元に行きません。
以前は、何もすることがない時、テレビを見ている時、眠たくなった時、などに
指しゃぶりがありました。
指しゃぶりというと、親指を吸う赤ちゃんのイメージがありますが、こうきの
場合は人差し指と中指をいっぺんに口に入れるという、なかなか大胆な
ものでした。
小さい頃からずっと続いていて、何度かやめる機会をうかがっていました。
神経科の先生や歯科の先生に相談もしましたが、こうきくんの場合は心を
安定させるためのものだから、無理にやめさせなくてもいい、というお話
でした。
それで、ずっとそのまま放っておいたら、小学校も卒業し、中学になっても
続くので、さすがにこのままでいいのかな?という気になってきました。
指に大きなタコはできているし、常にきれいな状態とは言えません。
学校の先生からも、作業活動が増えて衛生面のこともあるから、そろそろ
やめるように声をかけていったら、と言われましたが、そこからなかなか
変化が見られませんでした。
私が声を掛けると、逆にやだやだ、と指しゃぶりをやめない様子もあって、
これは当分無理かもしれない、とまた放ったらかして忘れた頃に、ふっと
消えていたのです。
あんなにやめられなかったのに、あっけなく無くなってしまったことが、
何だか不思議でした。
中学三年生。
こうきなりに、少しずつ、大人に近づいていっているのかなと感じます。

最近の変化をもう一つ。
家のゴミを、近所のステーションまで持って行ってくれるようになりました。
余計なものは片付けたい、というこだわりがあるのかもしれませんが、
妙に張りきって、家を飛び出して行きます。
忙しい朝に、これはとてもありがたい。
きちんと出せているか、今度こっそりついて行ってみようかと思ってはいる
のですが・・・。
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好きすぎると・・・ [記事]

 先日の日曜日、玄関のチャイムが鳴るので出て行くと、ご近所の若い
ママさん二人が立っていました。
 「実は・・・」
 「ソーラーライトがとても気になるみたいで、何度も触っているうちに、
壊しちゃったみたいで・・・」
 初めは、何のことだかよく理解できなかったのが、玄関先でソーラーラ
イトを持って飛び出してきたこうきを目にしたら、ようやく頭の回路がつ
ながりました。
 (あいつ、よその家のまで・・・)
あわてて謝って、状況を尋ねようとすると、ママたちはすまなそうに言う
のでした。
 「こわれたのは、本当にいいんだけれど、ライトが割れていたから、こう
ちゃん怪我をしてはいけないと思って・・・」
 (割れるほど、壊してしまったんだ)
驚いて、こうきの顔をにらみつけると、もうすでに「まずいことをした」と
わかったのか、
 「さわりません、さわりません、」
 「ひっこし、できる、できる、」
と大騒ぎに。
 悪いことをすると、望みだった引越しができなくなる、という頭があるので
す。が、こうきが騒ぎ出すと収集がつかなくなるので、そこではできる、でき
るよと一旦パニックをおさめ、ママさんたちにはひたすら謝るしかありません
でした。

 まさか、よその家のソーラーライトにまで点検に行っていたとは。
 夕方、何度も外に出て、長い時間戻らないこともあったのですが、自分の家
のライトの点き具合を見回っていると思っていました。本当にうかつだった。
もっと注意が必要だった、と私も反省でした。
 そこで、こうきと約束。
 よその家の庭には勝手に入らない。
 よその家のソーラーライトには絶対にさわらない。
「はいりません!さわりません!」と本人も反省したようでした。

壊してしまったものと同じようなソーラーライトを買い、お菓子も持って、
二軒のお宅に謝りに行くと言うと、こうきも自分から一緒についてきました。
 「ごめんなさい。ごめんなさい。もうやらない、もうしません。」
一緒に謝ることができたのは、立派でした。
 ママさんたちはとても恐縮していましたが、今度こうきが良くないことをし
ていたら、注意してくださいとお願いもできました。
 今度のことは、私自身、大反省でしたが、ご近所の方にこうきのことを知って
もらう、良い機会になったのかもしれません。

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はじめてのおこづかい [記事]

 ソーラーライトに夢中で、毎日いじったり、あちこち刺し替えたりしていたからで
しょうか、夏の前頃から、
 「つかなくなっちゃった。すてる」
と言うことが多くなりました。
 100円ショップやホームセンターに行くと、必ずソーラーライトを欲しがるようになり
ました。壊れたら、すぐに新しいのを買えばいい、という感覚でいるのが見えて、
あまり頻繁に買うのもよくないな、と思い始めていました。
 そこで、自分でおこづかいを貯めて物を買う経験をさせてみることにしました。
自閉症の子育てを描いたコミック、「光とともに・・・」には、主人公の光くんが、家の掃除
や庭の水やりのお手伝いしておこづかいをもらい、そのお金を貯めて自分で好きなお
やつを買う場面が出てきます。
 とりあえず、こうきにできそうなお手伝いは、と考え、自分とわたしたち三人分の布団を
畳んでもらうことにしました。休みの日には洗濯物干しもしてもらう、と決め、一回10円
をおこづかいとして貯めていくことにしました。

 こうきにとって、お手伝いと、10円のおこづかいというのが最初はうまく結びつかない
ようでした。
 専用の財布に10円が貯まっていくと、すぐにソーラーライト買う、と言い始めました。
学校でお金の読み方は教わっていましたが、実際の使い方や価値はよくわかっていな
かったようでした。
 お目当てのソーラーは、三個入り987円。今あるのが50円。まだまだ買えないよ、と
言ってもピンと来ないようなので、カレンダーで説明することに・・・。
 毎日10円だよね、(と書き込む。)ここで100円、ここまできたら200円、8月になった
ら600円、9月〇日でやっと990円だよ。
 こうきもそれを見て、やっと、(これはたいへんだ。買えるのは、果てしなく先のことだぞ、)
と理解したようでした。
 
 それから毎日、多少の雑さはありますが、言われなくても布団が畳んであるのには
感心しました。本人は、9月までカレンダーとにらめっこ。そのうち、あんまりじれったくな
ったのか、カレンダーを「すててもいいですか」と言ってきました。7月は月が終わったら、
8月は途中でカレンダーの紙を破いて捨ててしまいました。
 本当は9月28日が目標達成の日だったのですが、何百円かの臨時収入もあったりし
て・・・ようやく9月18日、日曜日がやってきました。
 何度も下見に行ったホームセンターで、念願の三個入りソーラーライトを手にしました。
あらかじめ広告を見て、何度も確認したものです。
ホワイト色三個入りと、カラー色三個入りがあって、最後までさんざん迷ったのち、ホワイト
三個入りをてにしてレジへ。
 自分の財布からどうしても払うというので、お皿の上に財布の中身を開けました。
山盛りの10円玉でしたが、店員さんは笑顔でゆっくりと数え、990円ですね、と言ってくれ
ました。こうき、おつりをもらい、大満足でソーラーの入った袋をぶら下げ店を出ました。

 帰りの車の中、
 「こうき、ソーラーライト買えてよかったね」「おてつだい、がんばったね」
と声をかけると、
 「がんばりました」
と満足気な返事。
 「おてつだい、長くやったね。いつから始めたんだっけ?」
すると、
 「7月7日、はじめました!」
行事や予定の日付には強いこうきのこと、確かにその頃だったかもしれません。
 本人も、気になっていたことがひとつ終わり、安心した様子でした。
 この3ヶ月のこうき、お手伝いはよく頑張っていたけれど、お金のことや、いつ
買えるのかにこだわりすぎていた気もして、おこづかい制はそこでひと区切り
にしようと、私もほっと一息ついたのでした。





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お祖父ちゃんの入院 [記事]

夏休み前、お祖父ちゃんが転んで尾てい骨を骨折し、入院となってしまい
ました。
他の患者さんのこともあり、こうきを連れて病院にお見舞いに行くのは
躊躇していたのですが、土日の見舞いには家に置いていくわけにもいかず、
一緒に連れていくことにしました。
四人部屋の他の患者さんはみな、お祖父ちゃんと同じような高齢の方々。
あまりうるさくしては、と心配してはいたのですが、案の定、病室に入って、
テレビが設置されているのを見るなり、
 「テレビはみれますか、」
 「BSはうつりますか」、(目下の関心事です)
よーく響き渡る声で連呼します。
やがて隣のベッドの方にも同じ事を尋ね始めるので、強制的に外の談話室
行きに・・・
トイレや他の病室も見たい気持ちがあるようですが、それもアウト!なので、
約束事が増えていきます。
そのうちに、売店でジュースやおやつを買ってもらい、談話室で食べるのが
楽しみのひとつになったようで、
 「びょういん、いきたい」
と、まるでお出かけ気分で病院通いを心待ちにしていました。
 「じいちゃん、うごけますか」
 「じいちゃん、いつ、おうちかえりますか」
何度も聞いてくるのは、お祖父ちゃんに早く帰ってきて欲しいというよりは、
もう少し病院のお見舞いに行きたい(自分のお楽しみを含めて)、という
気持ちがあるからなのでした。

ある時、食事のあと、お祖父ちゃんがおぼつかない手で歯磨きをして
いたところ、突然こうきがその歯ブラシを取って、磨いてあげるということ
がありました。お祖父ちゃんは、素直に口をあけたまま、まんざらでも
なさそうな顔。
 「こうきに、みがいてもらった」
と、嬉しそうでした。
また、歩けないお祖父ちゃんの車椅子姿を見ていたからでしょうか、放課
後デイで、友達の車椅子を押してあげたり、手助けをすることがあったそ
うです。
病院で見聞きしたことは、こうきの糧にもなったのかな。
 
お祖父ちゃんの退院が決まり、二ヶ月近く通った病院に行くのも最後の日。
 「じゃあ、さようなら」
 「病院くるの、これで最後、じゃあー、お世話になりました~」
自分がまるで入院していたかのように、よく通る声で看護師さんや患者さん
たちに手を振ってあいさつしていた、こうきでした。




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