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なぜかBS [記事]

 「引っこししたい」希望はずっと続いていました。
2年前、身近な友達や先生たちが相次いで引越ししたのがきっかけでした。
 その時、引越しはできないよ、と言った覚えがあります。
でも、なかなか気持ちはおさまらず、「できる、できる!」
頑として言い張り、あまりにそれが続くので、
 「引っ越し、できるといいですね。」
 「引っ越し、できるかもしれないね。」
と、いつものあいまい言葉でやり過ごそうとしました。ところが、
 「いいですね、やだ!」
 「かもしれない、やだ!!」
あいまい作戦もあえなく失敗でした。
 その後もなかなか納得できずに、いろんなやり取りをするうち、いつの間にか、
「高等部卒業したら、引っ越しのこと考えよう」から「高等部卒業したら、引っ越し
できる」という話になってしまい、それからというもの、何かにつけて「引っこしで
きる」が口癖になりました。
 少しでも悪いことをしてしまったり、失敗してしまうと、慌てて、
 「ひっこしできる!できる!」と主張。
こちらも、
 「そんなことしたら、引っ越しできなくなるよ。」
 「引っ越ししたいなら、~するよ。」
引っ越しをエサにするような言い方を、ついしてしまうこともありました。

 しかし、実現不可能なことをずっと言い続けるのは、こちらもつらいものがあります。
引っ越しの話になると、いつもこちらは生返事で、こうきの一方的な願いをとにかく
やり過ごすしかないのです。
 正直、願いは薄れていくのではないかな、と思っていました。ところが、中2、中3と、
二年経っても薄れるどころか、だんだん具体的になっていきます。
 近所のマンションに住みたい、から始まり、引っ越し屋のおじさんに電話して聞いて
みる。3月何日に聞いてみる。などと、次から次へと計画を決めてしまいます。そして、
レスパイト先近くのマンションを指差し、
 「ここのおじさんに聞いてみる。」
と言い出しました。たぶんいっぱいだから無理だよ、と言っても、
 「きいてみる。」の一点張り。 
ついに、「2019年3月19日、引っ越しのおじさんに聞いてみる」ということが決定事項
になり、毎日何度も繰り返し言うようになりました。
 
 さすがにここまで来ると、家族みんなが疲れてきました。こうき自身もそうですし、私たち
のこうきへの対し方が、どうしても冷たくイライラしたものになってしまいます。
その状態がだんだん悪くなってきていて、これはもう限界ではないか、と思い始めました。
こうきの場合、何かきっかけがないと、今の状態から抜け出すことは難しい。何か、
引っ越しの代わりになることはないだろうか、と考えたとき、まず頭に浮かんだのは、
「飛行機に乗ること」でした。
 以前、飛行機が好きで、空港によく飛行機を見に行っていました。
時刻表を見ながら、いつ飛行機が着陸し、離陸するのか、どこから来て、どこへ向かうのか、
確認をしていた時期がありました。飛行機乗って福岡行きたい、と言っていたこともあった
ので、大変だけれど引っ越しを終わりにするために、これが代わりになれば、と思ったの
です。
 ところが、本人に聞くと、一言。
「ひこうき、こわい。のりません。」
ブームは過ぎていて、あっさり却下です。
 
 こだわりの熱が冷めるまで、これはもうしばらく待つしかないのかな、とあきらめていたとこ
ろ、テレビのBS放送に興味を持ち始めました。
 テレビのチャンネルをいじるのは好きだったのですが、旅行先で自分の見たことのないBS
放送が映る!ということに気づいてしまったようです。いつからか、毎日、新聞のテレビ欄を
じっとながめ、番組をチェックするようになりました。好きだけれども見られないアニメ番組の
時間を確認したり、外では、よその家についているBSアンテナの様子をながめることが多く
なっていました。
 人にも、BSが映るかどうか、アンテナがあるかどうか、CSは?WOWWOWは?スカパー
は?・・・と質問が止まらなくなりました。
 なんだか、引っ越しよりもBSの話が多くなっているような気がしてそれじゃあ・・・
 「引っ越しのかわりに、BSアンテナにする?」
ポロリと口にした途端、こうきの顔が輝きました。
 「かうかう。BSアンテナほしい!」
案の定です。
 それでも引っ越しのことは気になっているので確認してきます。
 「引っ越しは、引っ越しのおじさんに聞いてみたら・・・」
 「そう、マンションはいっぱいだって。だめだって。」と私。
 「いっぱいだから、ひっこしできません。やめる。」
 あれあれ。
あれほど、かたく結んであった紐がゆるゆるとほどけていきます。
 あんまりあっけなくて、もう一度「引っ越しはしないね」と念を押します。
 「しません。ひっこしは、おじさんに聞いたらいっぱいだって。だから、しませーん。」
妙な調子をつけて、ふざけるこうき。
 本人も、引っ越しは実現できるとは思っていなかったのかもしれません。
引っ越しへの思いは強かったけれども、それをおさめていくきっかけが欲しかったのかも
しれません。
 なぜかBS。
 けれど、とりあえず、引っ越し宣言が続いた長い長い2年間が終わり、家族一同、
心底ほっとしたのでした。           
                                      


   


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